
- この記事のねらい
- 参加者プロフィール
- Round1:どうやってぶっちゃけさせていますか?(遠慮のとっぱらいかた)
- Round2:ふりかえりがうまくいったとき、いかなかったときって?
- Round3:ふりかえりのファシリテーションはスクラムマスターが常にやる?ローテする?
- DMMチームのふりかえりまとめ
- ふりかえり座談会のふりかえり
この記事のねらい
こんにちは!みなさん、チームのふりかえりはマンネリ化せず、きちんと機能していますか?
DMM.com プラットフォーム開発本部のデザイナー古川です。
今回、なんでもやってるDMMのプロダクトチームを集め、ふりかえり座談会をやれば、共通点や文脈に応じたいろんな知見が集まるのでは...!? という期待を胸に、ふりかえり座談会を行いました!
DMM は言わずもがなマルチドメインですが、チームも超多種多様!業務以外で横のつながりを作れる機会は貴重なので、どんなことをやっているのか興味津々です!
この記事では、そんな思惑で始めた 「ふりかえり座談会」の様子をレポートしつつ、特に参加者同士の会話から集められた、チームのふりかえりをより良くするための実践知を抜粋してお届けしていきます!
参加者プロフィール
イベント当日は各部署から濃いメンバーが名乗りを上げてくれました!
- 関矢 浩史 (パネラー)
- 3Dプリント開発部とオンラインクレーン開発部の部長を兼任
- DMM Boostでは社内のアジャイルコーチとして支援中。チームに合わせてスクラムをやったりやらなかったり。前職の影響でふりかえりのワークを自作しがち。CSP-SM、A-CSPO、CAL2資格保持。
- 築山 かおり (パネラー)
- DMM Boost プロダクト開発本部でDMMチャットブーストのプロダクトオーナー
- 今年からプロダクトオーナーになり、スクラムはもとより開発部門にジョインしてから1年という新米。チームにスクラムマスターがいないため、試行錯誤しながらみんなでスクラムを回している。
- 小杉 鞠奈 (パネラー)
- プラットフォーム開発本部 第1開発部 CSPグループの開発メンバー
- ディレクターを名乗りながらプロジェクトマネージャーとプロダクトマネージャーのつまみ食いみたいなことも担当。職務としてスクラムマスターは未経験だが、それっぽい動きをしたことはあるため、一番オブザーバーに近い立ち位置で座談会に参加。
- 北澤 由貴 (パネラー)
- プラットフォーム開発本部 第2開発部 クーポンチームのチームリーダー兼プロダクトオーナー
- 普段は開発チームのチーム運営を担当。スクラムマスターは以前のチームで少しだけ経験あり。
- 平田 彩夏 (パネラー)
- プラットフォーム開発本部 第3開発部 Turtleチームのデザイナー兼スクラムマスター
- 約3年くらいデザインシステムの開発・運用に従事。チーム再編成の最中、スクラムしっかりやろう!ムーブメントが起こり、なぜかスクラムマスターになることに。「わたし、これからどうなっちゃうの〜〜!?」と困惑していたが、内藤師匠に出会い1年。今ではデザイナーとスクラムマスターの両立に奮闘中。
- 内藤 聡 (モデレーター)
- VPoE室推進チーム所属
- 社内のアジャイルコーチ活動&外部露出がメイン業務。現在はDMM Boostでの組織づくりに注力。モデレーター初体験だが、アジャイルコーチとしての豊富な経験を活かして座談会を盛り上げる。A-CSM資格保有。
また、参加者どうしの交流も兼ねて、参加者、パネラー、モデレーター、企画メンバーのプロフィールを事前にFigJamで募集しました。
当日は、内藤さんのナイスな提案で、事前にいくつか登壇者が話せそうなテーマをピックアップし、当日、Slido で投票が多かった順にお話ししていきました。
それでは早速いってみましょう!
Round1:どうやってぶっちゃけさせていますか?(遠慮のとっぱらいかた)
内藤さんの「どうですか?うちのふりかえりはぶっちゃけています!という人、手を挙げてください!」
——という第一声に対し、手の上がり具合はパラパラ...(自信なさげ)。
「いや、ぶっちゃけていない、遠慮していないわけじゃないんですけど!」
と切り出したのは小杉さん。
チームの心理的安全性が低いわけではないのですが、ふりかえりになるとなぜか空気が暗くなる...というか、あまり盛り上がらないんですよね〜。
北澤さんも「わかります、まぁ楽しい雰囲気ではないです(笑)」と共感。
小杉さんのチームでは、スクラムマスター不在のまま、同じ人がファシリテーションを続けてきたそうです。
ここからは、みなさんの印象に残ったお話をピックアップします。
リアクションで場を盛り上げる
正直、オンラインでのふりかえりって、対面よりも盛り上がらないんじゃないかと思いがちですよね。でも、築山さんのチームでは、ファシリテーターがテンションを上げて「ギャルマインド」でオーバーリアクションを取ることで、場を盛り上げているそうです。
具体的には、MiroやFigmaのリアクション機能を活用して、画面をハートで埋め尽くしたり、視覚的に楽しさを演出しているとのこと。
同じように北澤さんのチームでも、日頃使っているDiscordのサウンドボードを活用して、楽しさを演出しているそうです。
この話を聞いて「なるほど、オンラインツールって使い方次第で、むしろ対面よりも豊かなコミュニケーションを生み出せるのかもしれないな」と気づかされました。
大切なのは、場づくりに適したツールの選択と、それを活かすファシリテーターの姿勢なのかもしれませんね。
雑談で壁を溶かす
「ふりかえりの場だけ急に本音を話そうとしても難しい」「普段のコミュニケーションが硬くなりがち」といった課題、みなさんも経験ありますよね?
雑談って大事だよね、とみんななんとなく実感はしているものの、雑談ってどうやったら自然に起こるんだろう...と頭を抱えている人も多いのではないでしょうか。
平田さんのチームでは、エンジニアが作ってくれた「雑談ルーレット」を朝イチ10分のアイスブレイクに活用しているそうです。また「マイブーム会」を実施し、個人的な話題から技術的な話まで幅広く共有する場を設けていたとのこと。
今では朝会の雑談タイムに吸収されたようですが、特にエンジニアとデザイナーの混合チームでは、お互いの専門外の話題に触れることで新しい発見も生まれていたそうです。
この話を聞いて「なるほど、雑談は単なる息抜きではなく、チームの心理的安全性を高める重要な要素なのかもしれないな」と気づかされました。「やっているときとやらないときで口の滑りが違う」という声が、その証拠な気がします。
また、会の始まりだけではなく、「チェックインにアイスブレイク、チェックアウトに『ふりかえりのふりかえり』をする」ということも肝心だとか。
ふりかえりの終わりに「このふりかえりどうでした?」を2〜3分で書いて次回に活かす、という仕掛けは、ぶっちゃける勢いを作って、会の改善をスムーズに回すループを作ることができます。
この工夫は、試行錯誤を重ねてきた複数チームで繰り返し実践されているようでした!
チーム分割で課題を解決する
そもそも「うまくいっているかどうかってどう判断するの?」という疑問も。
皆さんも思い当たる節はありますか?
- 一つの話題に1〜2人しか意見が出ない
- “お通夜”状態、全員が傾聴モードに入ってしまう
そもそも、普段一緒に活動しているチーム全員が、必ずしもコンテキストの近いメンバーで構成されていないことも。
そんな時には、以下のように思い切ったアクションを取ったチームも!
あまりにもコンテキストが違う話題は分ける!
目標が違いすぎるチームは...もう分けました!
ふりかえりの場で「みんな聞いているけど死んだ魚の目...」と感じたら、チームが “別々の目標集団” になっているサインかもしれません。
そんなときは、人事上括られた集団で頑張るだけでなく、同じ目的目標に関わる集団ごとに分け直すことも、選択肢の一つかもしれませんね。
Round2:ふりかえりがうまくいったとき、いかなかったときって?
うまくいってるふりかえりって?
このテーマでは、内藤さんから「うまくいっているふりかえりってどんな感じですか」という問いかけが。
正直、これって結構難しい質問ですよね。だって「意見が出れば成功」と思いがちだけど、本当にそれでいいのかな?と迷うこともあるし、逆に「深い議論ができた」と思っても、結局何も変わらなかったり...。
参加者の皆さんからは以下のような成功の指標が挙がりました:
- 満遍なく意見が出たとき
- 深掘りとTRYが出たとき
- すぐ着手できるものが出たとき
- 短期と中長期の両方が出そろったとき
一方で、こんな声も聞こえました:
TRYが出たら「成功した感」を覚えてしまう。
ふりかえりによる効果を確認できるアクションが続かないと「やって満足」になりがち
この話を聞いて「なるほど、ふりかえりの『成功』って、実はとても曖昧で、チームによっても感じ方が違うものなのかもしれないな」と気づかされました。
ゾンビTRYを退治する
映画・ドラマで出てくる「ゾンビ」っていますよね?何度倒してもまた蘇ってくるゾンビ、怖いですね。アジャイルの実践中にもゾンビに遭遇することがあります。その場合のゾンビは「形骸化した」という意味です。
今回のイベント中にもゾンビふりかえりならぬ、ゾンビTRY なんて話題がありました。
正直、この「ゾンビTRY」という表現、めちゃくちゃ共感できますよね。みなさんも経験ありませんか?
小杉さんからはこんな話が。
TRYの優先度って低くなりがちで、付け焼き刃で考えたTRYを付け焼き刃でやって、再発する...ってなります笑
- TRY出したところで燃え尽きる
- TRY忘れるマン
- TRY放置わかりみが深い...
など、“ゾンビTRY” 問題が続出...!
パネラーの皆さんからも、以下のような議論も飛び交っていました。
- 「問題が再発した場合、以前のTRYが形式的な努力目標になっていて、根本原因を解決できていなかった...という意味だと思う」
- 「短期TRYに見せかけた長期TRYなのでは?」
また、築山さんのこんな話に、みんな「あぁ...」と納得。
優先度が落ちがちなTRYって、そもそもぬるぬるなTRYなんですよね...
さらに、関矢さんのチームでは忘れないように「アジェンダに積んでおいて思い出せるように、仕組み化している」というアイデアも出ていました。
これらの話を聞き、「皆さんあの手この手で工夫していて面白いな」と感じました。
SMART目標で具体化する
また、SMART 目標の原則が再確認されました。
正直、これってよく聞く話ですが、意外に基本的なセオリーを見落としてしまうことも多いのではないでしょうか。
- Specific:具体的であること
- Measurable:測定可能であること
- Achievable:達成可能であること
- Relevant:関連性があること
- Time-bound:期限が明確であること
これが達成されたのか?が観測・測定できないものでは、せっかく議論した時間が無駄になってしまう可能性もありますよね。
この話を聞いて「なるほど、一度、基本に立ち返ってふりかえりを見つめ直してみるのもいいな」と気づかされました。
“やめる” TRYの視点
このトピックは個人的にとても刺さりました...!
内藤さんの「みんなTRY増やしがちだよね」という発言に、みんな「あああああわかる!」という盛り上がり(笑)。
正直、これって本当にそうなんですよね。
- やったこと・わかったこと・次やること
- Keep・Problem・TRY
など、ふりかえりのワークは「アクションが増える」収束が多いですよね。
会場の参加者からも「引き算TRYでないですね〜足し算TRYですよね〜」「止めるって視点、目から鱗!」といった共感が多く寄せられました。
この話を聞いて「なるほど、『やめる』という視点って、確かに見落としがちだな」と気づかされました。
スプリントの長さ
スプリントの長さって、これもチームによって本当に様々なんですよね。
一般的には1〜2週間で回しているチームが多い印象ですが、なんと1dayスプリントをやっていたチームも!
正直、1dayスプリントって聞いたとき「え、そんなのできるの?」と思ったのですが、平田さんのチームでは実際に試してみたそうです。
ベロシティも上がっていた頃もあったんですけど、みんな疲弊してきて...笑 死ぬって思ってやめましたが、レビュー会ごとに次の成果物を宣言する『ネクスト宣言』という形で今も1dayで検査・適応する仕組みを残しています。
この「死ぬって思ってやめました」という表現、めちゃくちゃ共感できますよね。ベロシティを追いすぎて疲弊するって、多くのチームが経験していることだと思います。
内藤さんからは、野球の打率に例えた面白い話も。
僕は結構打率を見ますかね。このくらい行けるかなーって見て、そのヒット率を見るって感じ。
実際にDONEしたストーリーポイント数をスプリント開始前の確約したストーリーポイントで割って出した「 ベロシティヒット率」を見たりします。
この「打率」という表現、すごく分かりやすいですよね。完璧を求めすぎず、現実的な目標設定の大切さを感じます。
結局のところ、スプリントの長さにしてもベロシティの扱いにしても、チームが持続可能な形で走れるのが一番大切なんだな、とあらためて実感した瞬間でした。
Round3:ふりかえりのファシリテーションはスクラムマスターが常にやる?ローテする?
「ファシリテーションって、みんなやってみたいですか?」
——という問いかけに、会場からは「おもしろいからみんなにやってほしい!」という声が。でも同時に「やりたくない人にやらせてしまうのが怖い...」という不安の声も。
この質問、ふりかえりをやっているチームなら誰もが一度は考えたことがあるテーマですよね。ここからは、各チームの具体的なファシリテーション手法について深掘りしていきます。
ファシリテーションをやるメリットを理解してもらう
ファシリテーションを経験すると「人の話を聞く能力」が身につく、という声が多数ありました。
やりたくない人にも一度は経験してもらい、その大変さを理解・共感してもらったところ、参加度合いが変わりました!
この話を聞いて「なるほど、一度経験してもらうことで理解が深まるんだな」と気づかされました。
ファシリテーションのローテーション手法
各チームで様々なファシリテーション手法が実践されています。
関矢さんの「くじ引きローテーション」
「いつでも誰でもできる状態が正しい」という考え方で、くじ引きにすることで「運命」として受け入れてもらいやすくなります。
平田さんの「段階的移行」
「ガチャでいい?」と投げかけて、やりたい人から始めました。最初はサポートしながら、慣れてきたら完全に任せるようにしています。
初心者へのサポート体制
ファシリテーション初心者へのサポートも重要で、事前にテンプレートを用意したり、当日は経験者が隣でサポートしたり、事後には建設的なフィードバックを提供するなどの工夫が共有されました。
小杉さんのチームでは、ふりかえりの最後に「今日のファシリテーションどうでした?」という簡単なアンケートを実施しているとのこと。
最初は「良かったです」しか書いてもらえなかったんですが、具体的な質問に変えてから改善点も出るようになりました。
負担を分散させる
「ファシリテーションの負担が重すぎる」という課題についても議論が。
負担軽減の工夫
- 準備時間の確保(前日までにアジェンダ共有)
- チーム全体でのサポート体制
- ファシリテーション専用の時間枠設定
責任の分散
- アジェンダ作成は別のメンバーが担当
- 記録係を別途設定
- 時間管理係を分離
日々発生するファシリテーション。充実した時間にするにはある程度の準備や集中力が必要だと思います。この負担を全員でうまく分け合えたら素敵ですよね!
ゴールデンサークルの活用
さらに、TRY を決めるときには、「なぜそれをやるんだっけ?」から始めて WHY→HOW→WHAT を意識するゴールデンサークルというフレームワークを使うと良いよ!という提案も。
TRYを出すことがルーティンのようになっているふりかえりでは、「なぜ?」を忘れがちですよね。本来の目的にとってあまり有効でなければ、逆にチームの負担になってしまい、「TRY」を出す意義を見失ってしまうかも...。
ファシリテーションは技術だけでなく、チームの成長を促す重要な役割なのだということをあらためて実感したセッションでした。
DMMチームのふりかえりまとめ
座談会を通じて、どのチームも似たような課題を抱えており、それぞれが独自の工夫を重ねてより良いふりかえりを目指しているということに気づきました。
例えば、心理的安全性のつくり方、TRYの具体化、ファシリテーションの工夫、多様なアクティビティの活用、チーム構造の見直しなど、さまざまな要素が組み合わさって効果的なふりかえりが生まれるのだと痛感しました。
最後に、DMM の多様なチームが実践を通じて見つけた知見をまとめました。それぞれのチームの文脈に合わせ、適切に組み合わせて活用してみてください!
私も早速明日からゾンビTRYを作らないよう、気をつけていきたいと思います!
1. 良いふりかえりの土壌づくり
- リアクションで盛り上げる:オンラインツールのリアクションを活用し、遠慮していたメンバーも自然に発言できる雰囲気作り
- 雑談で壁を溶かす:ふりかえり前に雑談の時間を設け、硬い雰囲気をやわらげてからディスカッションに入る
- 場作りの始めと終わりを意識する:チェックインにアイスブレイク、チェックアウトに「ふりかえりのふりかえり」を組み込み良質な改善ループを作る
- 目的が一緒のチーム:異なる文脈の話題は早期に分離し、ベースの熱量を高く維持する
2. ふりかえりの質を高める
- 多角的な成功指標:TRYが出れば成功ではなく、意見の量や深掘り度、時間内完了など多角的に評価してみる
- 具体的なTRYにする:SMART原則で実行可能かつ測定可能なTRYを設計する
- ゾンビTRYを防ぐ:同じ課題が繰り返し出る場合は原因を見抜く議論をして、本質的な打ち手を打つ
- 引き算の視点:足し算TRYに偏らず、やめることを決める引き算TRYを取り入れてみる
3. ふりかえりを持続可能にする
- ローテーションで経験を積む:くじ引きや段階的移行で、チーム全体がファシリテーションを経験
- 主体的な挑戦を促す仕掛け:ファシリテーションのメリットを説明し、やりたくない人にも一度は経験してもらい、理解と共感から協力を生み出す
- 初心者をサポート:テンプレート準備、当日サポート、事後フィードバックで成長を支援
- 負担を分散する:アジェンダ作成、記録、時間管理を分離し、全員で負担を分け合う
- Whyを明確にする:ゴールデンサークルで「なぜふりかえりをやるか?」を全員が理解する
ふりかえり座談会のふりかえり
後日、運営スタッフ、パネラー、モデレーターによる座談会のふりかえりが行われました。
当日の様子を思い出しながら、全体的には次に繋がる手応えやポジティブな印象だったことを確認しあいつつも、今後の伸びしろとなる課題感を再確認できました。
今後も現場からふりかえりの取り組みや効果を共有することで、ふりかえり活動が組織により根付くよう、こういった社内イベントの企画運営を通じて実践者たちを盛り上げていきたいと考えています!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!