アクティべ式・心理的安全性のつくり方——今日から試せる3つの習慣 多拠点・リモートワークでも心理的安全性を高める方法とは——

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こんにちは。私たちはDMM.comの開発統括本部 データ基盤開発部 CDPグループ アクティベーションチームです。所属名がすごく長いので「アクティべ」と覚えてください。

私たちアクティべはメンバー4人のうち3人が金沢、1人が六本木と、拠点が分散した構成になっています。(DMMでは通常、人数比率的に六本木にメンバーが偏るため、これは珍しいケースです。)

本記事では、このようにコミュニケーションが取りにくいメンバー構成のチームが、どのようにしてチーム力、メンバーの心理的安全性を高めていったのかをご紹介します。

アクティベーションチームについて

早速ではありますが、簡単にチームの紹介をさせてください。

私たちは、DMMのデータ基盤について、社内の利用サポートや、関係部門間の調整をするチームです。

メンバーは4人。チームリーダー1人、スクラムマスター1人、開発者2人のメンバー構成です。アクティべのメンバーの勤務形態としてはリモートワークが主となっており、月に1~4回程度はオフィスに出社しています。またDMMでは主に東京(六本木)と石川(金沢)の2拠点に事業所を構えているため、住んでいる場所や所属部署によって出社場所が異なります。 そのためチームで揃って業務を行うことは数える程度しかありません。

チーム活動の弊害と課題

私たちが“安心して言える”仕組みづくりに踏み出す前は、いくつもの認識のズレが成果と働きやすさを削っていました。その中でも代表的な課題をいくつか挙げさせていただきます。

多拠点・非同期の壁

コロナ直後は拠点も働き方もバラバラ。同期的に集まる場が乏しく、非同期での知識共有も得意ではありませんでした。Discordを使ってはいたものの、マイク・画面オフがデフォルト、部屋の切り替え手間もあり、日中「聞きたい時に聞けない」状況が常態化。決まったミーティング以外は1日誰とも話さない日もあるほどでした。また、チーム外との会話はほとんどなく、コミュニケーションがクローズドになりがちでした。

個人依存と残業前提の進め方

進捗共有は“決まった時間にまとめて”行う運用だったため、漏れや属人化が多発。その結果、充分な進捗共有ができず認識のズレがそのまま翌日以降に持ち越されがちでした。さらに「(チームで助け合うより)個人に依存してチケットを完了させる」雰囲気が残業を誘発。ピーク時は月20~25時間程度の残業が常態化し(11~21時勤務が続くことも)、一時的なベロシティ上振れが「できた感」を生み、残業込みの生産性を正常値と誤解しやすい状況だったのです。今振り返ると、週40時間内で終わらない計画(プランニング)そのものが不健全でした。

プランニングの曖昧さ

当時、現在の主務に加え、今は行なっていない「社内計測データ取り込み依頼」など一度着手すると長時間の拘束を発生させる業務がありました。そのため着手開始が夕方になると2~3時間つきっきりで対応に当たるため自然と残業することが当たり前となっていきました。その結果、稼働状況もチーム内でバラつき、ナレッジが分断されていたのです。

こうした課題に対して私たちは、「キャパシティを前提に設計する」「常時会話できる状態を標準にする」「改善を“習慣”として仕組みに埋め込む」という方針へ転換しました。

結果として現在は、コアタイム1内で仕事を完結できる場面が増え、残業はチーム平均で月5~6時間程度に収まる結果に。その結果コアタイム外は分科会やスキルアップなど個人の投資時間に充てられるようになりました。

次章では、この転換を支えた「やってよかった3つの習慣」を具体的に紹介していきます。

やってよかった習慣 3選

1. スクラムイベントの改善

私たちのチームは、日々の業務にアジャイル開発の手法の一つである「スクラム」を取り入れています。スクラムには「スプリントプランニング」「デイリースクラム」「スプリントレビュー」「レトロスペクティブ」といった、チームで協力して価値を生み出すためのイベント(会議体)が定義されています。今回は、これらのスクラムイベントを形骸化させず、チームの「働きやすさ」や「生産性」向上のためにどのように改善・運用しているか、具体的な3つの取り組みをご紹介します。

1週間スプリントでの高速PDCA

私たちのチームは、スクラムのスプリントを1週間単位で回しています。最大の理由は、PDCAサイクルを高速化し、フィードバックの速度を上げるため。スプリントレビューや日々のコミュニケーションを通じて、ステークホルダーから「こういう観点が欲しい」「こうした方が良い」といったフィードバックを早くもらうことができます。「素早く出して、早くフィードバックをもらうこと」を重視することで、チーム内に生まれた「ちょっとしたモヤモヤ」や課題を放置せず、素早く検知し、次のスプリントで解決につなげることが可能になりました。

毎回のレトロスペクティブで「TRY」を実施し、課題を放置しない

スプリントの最後には、必ずレトロスペクティブ(ふりかえり)を行います。私たちのレトロスペクティブでは、よくあるKPT(Keep/Problem/Try)はあえてあまり使いません。しかし、毎回様々なアクティビティを用いて、ほぼ必ず「TRY(次に試すこと)」を出す、というルールにしています。 重要なのは、「ふりかえってよかったね」で終わらせないことです。「なぜその課題・モヤモヤが生まれたのか」という根本的な仕組みや構造を探求し、個人の努力ではなく「チームの仕組み」として解決することを目指しています。 また、よく"TRYは言い出しっぺがやる"という雰囲気になりがちですが、これは絶対に避けるべきです。TRYはチーム全員で取り組む「仕組み」として導入し、全員参加で改善を進めていくことが重要です。

チームで実際に行っているレトロスペクティブの一例

デイリースクラムの積極的な改革

デイリースクラムは、スプリントゴールに向けた進捗を「検査」し「適応」するための重要な場ですが、私たちはそれに加えて「チームのコンディション」の共有も重視しています。

メンバーのその日の調子を共有

「今日はめちゃくちゃ元気です」「ちょっと体調が悪いので病院に行きたい」こういった個人のコンディションを最初に共有します。仕事である以上、調子に左右されるのは良くありませんが、現実問題としてパフォーマンスには影響するものです。先に共有することで、チームとしてサポートしやすくなり、「今日はここまでやり切ろうか」「今日は無理せず帰っても大丈夫ですよ」などといった調整も可能になります。

Good & Newの導入

これは完全に「心理的安全性」の確保が目的です。「最近こんなゲームにハマっている」「昨日こんなご飯を作った」「週末どこかへ遊びに行った」など、業務に全く関係ない話も。お互いの好きなことや人となりを知ることで、「この人はこういうことが好きなんだ」という理解が深まり、心理的な距離が縮まる「単純接触効果」を狙いとしています。

以上、私たちが実践しているスクラムイベントの改善でした。日々のイベントを「仕組み」として捉え直し、改善し続けることが、チームの働きやすさに直結すると信じています。

2. いつでもチームで会話できるリモートワークの仕組み化

アクティベでは、コミュニケーションツールとして以前はDiscordを常時接続で利用していました。音声を繋ぎっぱなしにすることで、会話は可能な状態でしたが、そこにはリモートワーク特有の「物足りなさ」が常にあったのです。

それは、「出社時のような物理的な感覚の欠如」です。

Discordは便利です。しかし、相手の状況が視覚的に見えにくい側面を持っています。マイクオフ・画面オフが基本だと、今PCの前にいるのか、集中しているのか、それとも離席しているのかが分かりません。「今、ちょっと話しかけて良いんだろうか?」この小さなためらいが、かつての課題であった「聞きたい時に聞けない、ちょっとしたことが相談しにくい」という状況を生み出していました。

「仮想オフィスGather」が変えたこと

この「相手の状況が見えない」という課題を解決するために、私たちは仮想オフィスツール「Gather」を導入しました。GatherがDiscordと決定的に違ったのは、アバターを介して「誰がどこにいるか」が視覚的にわかる点でした。

私たちはまず、Gatherのスペース内に「休憩中エリア」を設置。休憩や離席をする際は、自分のアバターをそのエリアに移動させる。たったこれだけのルールで、「今は話しかけない方が良いな」という判断が誰でも一目でつくようになったのです。

「近くに相手がいる」という感覚が、話すハードルを下げる

Gather導入時、同じ課題感を持っていた同じ部署の他チームも一緒に利用することとなりました。 そうすると以前は「チーム外の人と会話することはほとんどなかった」のですが、Gather上では他部署の人が同じ空間にいるのが見えます。用事がある時に気軽に相手のデスク(アバター)まで移動して話しかけに行けるようになり、チームを超えた交流や雑談も生まれやすい環境に。

アバターやデスク周りをカスタマイズして「個性」を表現できる楽しさも、オフィスでの雑談に近い雰囲気作りに一役買っています。このようにして、Gatherはリモートワーク環境下に「物理的なオフィス」の感覚を取り戻してくれました。相手の状況がわかる安心感と、気軽に移動して話せる体験が、「いつでも会話できる」チームの土台となっています。

データ基盤開発部のGatherでの様子

3. ペアワーク・モブワークの意識づけ

私たちのチームが抱えていた「多拠点・非同期の壁」「個人依存と残業前提の進め方」といった課題は、裏を返せば「チームとしてリアルタイムで問題を解決する仕組み」が弱かったこと。「メンバー間での相互理解」が足りなかったことを示しているのではないかと、振り返ってみてそう思いました。

この状況を打破するために、以前からやってきた「ペアワーク」と「モブワーク」を意識的に増やすことにしたのです。

ペアワーク・モブワークとは?

これらは、もともとアジャイル開発などで用いられる作業手法です。

▼ ペアワーク

2人1組で1つのタスクに対し、1台のPC(または画面共有)を使って共同で作業を進める手法。1人が画面操作をする「ドライバー」役、もう1人が指示を出す「ナビゲーター」役を担い、役割を随時交代しながら進めます。

▼ モブワーク

1つのタスクを3人以上のチーム全員で行う手法です。1人が「ドライバー」役、残りの全員が「ナビゲーター(その他のモブ)」としてリアルタイムで意見を出し合い、議論しながら1つの成果物を作り上げていきます。

「1人で悩む」から「誰かと協働する」へ

ペアワークやモブワークを増やす目的は、以下の課題を直接的に解消することでした。

▶︎ 「聞けない」の解消

作業を常に複数人で行うことで、「ちょっとした疑問」をその場で即座に共有・解消できます。「聞きたい時に聞けない」状況が物理的になくなります。

▶︎ ナレッジの流動化

特定の個人のみが持つ「暗黙知」が、共同作業を通じて自然とチームの「形式知」へと変わっていきます。

▶︎ 心理的安全性の醸成

ペアやモブで一緒に考えることで、問題は個人のものでなく「チームのもの」となり、健全なキャパシティ(週40時間内)で業務を完結させる意識にも繋がりました。

とはいえ、ただ人を集めるだけだと効果的なペアワーク・モブワークは実現しないでしょう。特にリモート環境下でこれを常態化させるには、お互いの思考をいかにスムーズに同期させるかが鍵となります。そこで私たちは、「図(絵)を描く」という具体的なコミュニケーションを重要視することにしました。

ワーク中など不明点はなるべく図を描いて意思疎通する

いくらペアワークやモブワークを活用しても、テキストや言葉だけでは「お互いの頭の中にあるイメージ」を正確に揃えられないことは少なくありません。「今、どの部分について話しているか」「システムがどう連携しているか」といった認識がズレると、「細かな認識のズレ」となって蓄積し、作業の手戻りや作業チケットの要件を満たせない原因となり得ます。

「描く」ことでズレを即座に解消する

そこで私たちは、ペアワークやモブワーク中、少しでも言葉での説明が難しいと感じたら、「ちょっと図を描いていいですか?」と提案し、Miro(共有のホワイトボードツール)を活用しています。

必ずしも凝った図を作る必要はなく、単純な「箱と矢印」でも十分。この習慣がもたらす効果として、以下があげられます。

▶︎ 共通理解の高速化

複雑なロジック、画面遷移などは、言葉で説明するより図にした方が圧倒的に早く、正確に伝わります。

▶︎ 不明瞭な部分の明確化

描かれた図の上で「この矢印はどういうデータですか?」「この箱(機能)の役割は?」と具体的に不明点を指し示すことができます。図にすることで、考慮から漏れている箇所を洗い出すことも可能です。

▶︎ 議論の「土台」になる

全員が同じ図を見ながら議論することで、「今、何について話しているか」が明確になり、効率的に結論に向かうことができます。

▶︎ 「生きたナレッジ」になる

その場で描かれた図は、そのままスクリーンショットを撮ってConfluence(ナレッジ共有ツール)に貼り付けるだけで、後から見返すメンバー(非同期のメンバー)や未来の自分たちにとっても強力な「生きたナレッジ」となるのです。

リモートワーク環境下でのペアモブにおいて、「図を描く」ことは、心理的安全性を保ちながらお互いの思考を可視化するシンプルかつ強力な手段となりました。

まとめ: 心理的安全性は「仕組み」でつくる

本記事では、アクティベが「チーム活動における課題」を乗り越えるために実践してきた、3つの習慣をご紹介しました。

▶︎ スクラムイベントの改善

「TRY」の徹底と「コンディション共有」で、課題と個人の状態を放置しない仕組み。

▶︎ 仮想オフィスGatherの活用

「相手の状況の可視化」で、「今、話しかけて良いんだ」という安心感をつくる仕組み。

▶︎ ペア/モブワークと図解

「常に誰かと作業する」ことと「視覚化」で、「1人で悩まない」仕組み。

これらに共通しているのは、「個人の努力や心がけ」に頼るのではなく、チームの「仕組み」や「習慣」として心理的安全性をプロセスに埋め込んだ点にあります。

かつて私たちが抱えていた「聞きたい時に聞けない」「残業が常態化する」といった課題は、ツールや手法の問題である以前に、「安心して言える」「健全に働ける」ための土台が揺らいでいたことの現れだったと思います。

3つの習慣を根気よく続けた結果、多拠点・リモートワークという環境下でも、チームのコミュニケーションは活性化し、残業時間は大幅に削減されました。

この記事で紹介した「今日から試せる3つの習慣」は、特にコストがなくても始められるものがほとんどです。もし皆さんのチームが似たような課題を抱えているなら、まずは小さな「仕組み」づくりから試してみてはいかがでしょうか。


  1. DMM.comのコアタイム・・・11 ~ 17時となっており、この時間外は個人の裁量で早く来て早く上がるか、遅く来て遅くに上がるかを決めています。