スクラムフェス金沢2025 登壇レポート

サムネイル

はじめに

こんにちは。DMM.com VPoE室 推進チームの内藤聡(@sasatoshin3104)です。
去る2025年6月13日〜14日の2日間、弊社ゆかりの地である石川県金沢にて、アジャイル開発・スクラム実践者たちの対話とつながりの場であるアジャイルコミュニティの祭典、スクラムフェス金沢2025が開催され、弊社もシルバースポンサーとして協賛しました。
また、プロポーザルを採択された弊社所属メンバー3名が、金沢で現地登壇しました。本記事は登壇メンバーそれぞれによる登壇レポートです。
(※ 正確には、佐々木・内藤がDMM.com所属としての参加で、河西のみ個人参加)

登壇レポート(1): 共創はどこまで拡張できるか ─「民泊×地域共創」の現場に見る、スクラムとパターン・ランゲージの可能性

こんにちは、DMM.com VPoE室 デザインリードの河西紀明です。
私は現在、VPoE室という組織横断の立場から、(1)新入社員研修などの研修やワークショップの設計、(2)モブデザイン推進を通したスクラム導入支援、(3)デザインの実践知を各開発チームへ展開する、といった文化づくりの支援、を行っています。

今回のスクラムフェス金沢2025 ( #scrumkanazawa ) では、日常的に関わっている宿泊運営の現場で得られた実践を起点に、非ソフトウェア領域におけるスクラムとパターン・ランゲージの応用可能性についてお話ししました。現場で得た気づきを、DMMの事業開発、クリエイター組織に還元し、組織の学びへと接続していくという、実践知の循環的活用をテーマにした発表です。

民泊運営における実践知の共創
民泊運営における実践知の共創

スクラムとパターン・ランゲージの実践知:現場から生まれた共創の仕組み

speakerdeck.com

2025年7月、スクラムフェス金沢2025 にて『民泊×地域共創:スクラム経営とパターン・ランゲージの実践で編む持続可能なまちづくり』と題し登壇しました。

一見すると「民泊経営」が主題のように見えるかもしれませんが、本登壇で伝えたかったのは、そこから得られたスクラムや共創の実践知を、プロダクト開発や組織にどう還元し活かしていけるかという視点です。

日常的に運営している宿泊施設の現場では、地域のメンバーとチームを組み、役割や価値観を共有しながら運営しています。そこにスクラム開発経験やUI/UXデザインの視点を持ち込み、業界未経験者を含むチームに“共創と自律”の文化を根づかせる取り組みを実践してきました。

具体的には、スクラム経営の観点から以下のようなアプローチをしました:

  • デイリースクラムの導入による現場と経営の意識統一
    • おもてなし・清掃チームと経営側の間で生じがちな認識のズレを解消するため、毎朝15分の短い対話(デイリースクラム)を継続。これにより、お互いの業務状況やタスクを可視化し、優先度のすり合わせがスムーズになり、“管理する/される”関係ではなく、互助的に動けるチーム文化が育ちました。
  • パターン・ランゲージを活用したサービス設計とナレッジの継承
    • スタッフや地域パートナーとともに行った 「パターン・ランゲージ・ワークショップ」や「パターン・ジャーニー」 では、サービス提供の背景にある価値観や想い、現場の工夫を言語化・構造化。単発的な感覚や暗黙知だったノウハウを、連続性のある経験知として再現・継承可能な資産へと昇華させていきました。

これらの取り組みは、DMMが手がける事業や多職能チームのプロダクト開発に日々生かされています。

  • 暗黙知の可視化
  • 挑戦を恐れない、失敗を許容するムードづくり
  • 失敗体験の資源化
  • 成功体験に連続性を生み出す
  • チームの共通言語づくり
  • 組織文化の醸成と継承

といった思想的なエコシステムの構築をテーマに直結しており、プロダクト開発においてより良いUI/UXデザインや事業価値の創出、UX戦略の民主化とも強く結びついています。
現場で得たインサイトをプロダクトや開発文化にフィードバックし、再びそれを現場に還元する————
このような“知の往還”によって、DMMにおける持続可能な価値創出の一助になることを目指しています。

発表してみての感想

スクラムフェス金沢2025 という場で、あえて“民泊とまちづくり”というプロダクト開発とは遠いように見えるテーマを扱ったことで、「こういう実践もスクラムなんだ」という声を多くいただきました。
開発の現場に限らず、人と人が協働するあらゆる現場でスクラムの考え方やパターン・ランゲージは応用できるのだという確信を、登壇後の対話を通じてさらに深めることができました。
中でも印象的だったのは、「自分たちの現場でもチーム間の目線のズレや属人化に悩んでいる」という声が複数あったこと。
それはソフトウェア開発だけでなく、営業、サポート、バックオフィス、そして地域やサービス業などあらゆる組織が抱える共通の課題なのだとあらためて実感しました。
今回の登壇を通して、「スクラム」や「UX戦略」という言葉を特別な領域のものではなく、もっと広く実践知として開いていく意義を再認識しました。 そして何より、社内のメンバーにもこの内容が届いたことで、あらためて自分の実践がDMMという組織に還元可能な知見であることを再確認しました。
組織づくりやプロダクト開発の現場に向けて、これからも身近な経験から抽出した実践知を、言葉と型にして共有していくことを大切にしていきたいと思います。

登壇レポート(2): チーム開発における責任と感謝の話

こんにちは。プラットフォーム開発本部カスタマープラットフォームグループでバックエンドエンジニアをしている佐々木です。今回は「チーム開発における責任と感謝の話」というテーマで、スクラムフェス金沢に登壇しました。この登壇を通じて得た学びを振り返ります。

発表内容の要約

speakerdeck.com

開発メンバーとして日々の業務に取り組む中で、「これは自分の仕事なのか?」と迷う場面が度々ありました。スクラム導入初期は、スクラムマスターへの依存や、プロダクトへの当事者意識の欠如、メンバーへの感謝の不足といった課題に気づけずにいました。結果として、リーダーへの負荷が集中し、チーム全体が「待ち」の姿勢に陥っていたのです。
この状況に危機感を抱き、チーム内で助け合いを重視するようになりました。具体的には、運用や問い合わせ対応の分担、モブプロ・モブレビューの導入、「気づいたらやる」文化の推進などを行いました。こうした取り組みにより、レビュー負荷の偏りやリードタイムに定量的な改善が見られるようになりました。
一方で、責任を分担したことで他のメンバーの負荷が増えていないかという懸念も芽生えました。そこから「やってもらって当たり前にしない」「感謝を言葉にする」といった意識が生まれ、実践するようになりました。

登壇の背景

スクラムフェス金沢への登壇には、地元・金沢出身としての思い入れがありました。DMMも金沢に拠点を持ち、地域のイベントに関わりたいという思いが原動力となりました。ただ、私はスクラムマスターやプロダクトオーナーではなく、一メンバーとして日々を積み重ねている立場なので発表内容には悩みました。一メンバーだからこそ、「責任」と「感謝」という当たり前のようで見落とされがちなテーマを、あえて語ろうと決めました。

登壇してみて

今回の登壇は、私にとって初めてのオープンな場での発表であり、大きな不安を抱えて臨みました。
そんな私にとって、スクラムフェス金沢の運営の皆さんの温かく丁寧な対応は大きな支えとなりました。開催前には、RSGT(Regional Scrum Gathering Tokyo)でも使われている行動規範が紹介され、「誰もが安心して語れる場」であることが明確に伝えられました。発表時も聴衆の皆さんは終始あたたかい眼差しで話を聞いてくださっていました。

行動規範
行動規範

また、登壇後には何人かの方から声をかけていただき、「共感した」「自分のチームでも似たような悩みがある」といった対話が生まれて少しでも興味を持ってくださったことが励みになりました。

今後

イベントを通じて、登壇そのものだけでなく、多くの対話やセッションからも学びを得ました。まだまだ改善の余地はありますが、気づきをチームに持ち帰り、より良いチームづくりに繋げていきたいと思います。

登壇レポート(3): 2年連続登壇で深まった金沢コミュニティとのつながり

改めましてこんにちは。DMM.com VPoE室 推進チームの内藤聡(@sasatoshin3104)です。社内アジャイルコーチとしてスクラムチームの支援、組織づくり、スクラムマスター支援、新人研修、採用支援などを担当しています。

DMM創業の地でもある金沢で開催されるというつながりを感じて、スクラムフェス金沢には2024年の第1回から参加しています。そのときは「頼られるのが大好きな皆さんへ - 支援相手との期待の合わせ方、突き放し方 -」で登壇しました。その際、スクラムフェス金沢の皆さんから頂いた温かい歓迎に感銘を受け、2025年も参加を強く決意していました。
今回は、前回発表テーマに関連させた、支援相手・相談相手とのコミュニケーション作法に関するプロポーザルが採択され、登壇できることになりました。以下は発表概要と参加の感想です。

登壇の様子
登壇の様子

発表:「GROWモデルで悩みを構造的に理解しよう! ー スムーズな会話で、よりよい関係性へ ー」

speakerdeck.com

概要は「話を理解しながら聴くことの難しさ」に焦点を当てたものです。1on1での「聴くこと」「話を理解すること」の難しさから、自身の取り組みを紹介しました。傾聴の重要性は認識しつつも、私は単なる「壁」ではなく「よく喋る壁」として、相手の話を整理し共感を深めるスタイルを好みます。私にとってこの課題解決に最適だったのが、コーチング手法のGROWモデルでした。

GROWモデルは、Goal、Reality、Options、Willの4ステップで構成され、相談相手の目標達成を促します。この手法を Joe Justice先生のA-CSM研修で学び、1on1で実践した結果、「考えがスッキリした」「次にやるべきことが明確になった」などポジティブなフィードバックを多くいただけるようになりました。

スクラムやアジャイル開発の中心はチーム、コミュニケーション、そしてメンバーの主体性だと考えます。GROWモデルを用いることで、自分の意見を押し付けず、皆さんが自ら考え、選択し、行動することを応援できるようになってきたと感じます。この実践例を共有したく、今回発表に至りました。

感想:発表してみて

あらためて 現地登壇してよかった! と強く感じました! 昨年同様、現地参加の価値や登壇の充実感は大きかったですが、今回は特に多くの質問やDiscordでのコメントをいただけたことが、登壇者として最高の喜びでした。これまでの準備の苦労も吹き飛び、自己効力感と満足感が倍増しました! また、今年は社内からの参加者も増え、嬉しさもひとしおでした。この勢いを来年にも繋げたいです。2年連続での登壇、社内での関心の高まり、コミュニティへの親近感など、金沢とのつながりがますます深まっていると感じています。

最後になりますが、今回の登壇にご支援くださった皆様、ご参加くださった皆様、運営の皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました!

最後に

弊社内ではアジャイル開発の実践例は多くあるものの、それに比べて外部へ露出・発表している例はまだ決して多いとは言えない状況です。
今後も現場ではより多くの挑戦と失敗を重ねながら実践知を蓄積し、それらを社内外コミュニティへ還元していけるよう、引き続きどんどん盛り上げていきたいと考えています。
最後までお読みいただきありがとうございました!