
- 自己紹介
- はじめに
- 1. AIの進展による数年先のデザイナーの役割の変化
- 2. 理想に届かないAIに嘆かず、今伸びてるAIに目を向ける
- 3. デザインと事業の接続点をAIと見出す
- 4. さらなるデザイン組織全体の定着へ
- さいごに
自己紹介
クライアントワーク / 事業会社でデザイン・ディレクション経験を経てDMMにジョイン。新規事業のデザインリードを務めた後、複数の事業にデザイン支援を行う横串部署を組成し現職。全社デザイナーの評価・教育・技術の推進を通じて「主体性」と「デザイン+α」を強みに事業貢献するデザイナー集団を目指す。
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はじめに
この記事は、DMMグループ Advent Calendar 2025の記事です。
こんにちは。デザインアプローチを軸とした全社横串のデザインセンター「デザイン部」の部長を務めております、齊藤 卓真と申します。
かれこれ2021年から恒例行事になりましたが、前回の投稿から早一年。今年の記事では、生成AIの進展を踏まえながら、DMMのインハウスデザイナー組織が「商材・事業(サービス)・市場の理解」をどのように強化し、AI活用や評価ロジックに落とし込んでいるかを整理してお伝えします。インハウスでのデザイン組織づくりや、AI時代のデザイナー像に関心のある方の参考になれば幸いです。
1. AIの進展による数年先のデザイナーの役割の変化
現在、合同会社DMM.com (以後、DMM)のみで約140名のデザイナーが在籍しており日々、様々な周辺領域へ挑戦し、他職能人材とのコラボレーションをしています。
長年、「事業とサービスを理解し、他職能人材と協業しプロダクトを前進させるデザイナーを一人でも多く輩出すること」を掲げ職能評価・人材教育・先進技術導入の方針策定や推進を牽引してきました。
そして昨年。とうとう生成AIの精度が向上し、取り扱える情報量と情報形式が急速に増え多様化したことから本格的にAGI(汎用AI)へのステップを刻んでいると判断しました。
あらためてAIが一過性のトレンドではないことを確信し、近い将来にデザイナーの業務内容や関わり方の大きな変化に備え、「デザイナーAI活用人材ロードマップ」を作りました。

2025年時点では、それでも特化型AIの精度が向上している段階ですが、徐々に個々のAIが繋がり業務フローとして成立するシーンが増えてきています。
デザイナーの職域も同様に近い将来(中長期)、もっと広域にAGIがサポートしてくれるようになると考えられ、デザイナー自らが意思決定を司る領域も広がると考えています。
では、事業会社であるDMMのインハウスデザイナーとして我々がこの変化に対応するため、近い将来に欠かせないものは何か?そして、DMMという多種多様な事業の集合体という稀な環境を最大限に生かす能力とは何か?

それは、「商材・事業(サービス)・市場」の理解であると考えています。
参考:取り組み詳細の記事
2. 理想に届かないAIに嘆かず、今伸びてるAIに目を向ける
2023年から2024年にかけてデザイナーが関連する生成AI技術として、画像領域が目覚ましく進展し、DMMでは写真加工やグラフィック素材の作成などの業務導入を中心に定着させてきました。
その後、2025年秋ごろまでの画像の生成領域の技術進展はディテールの再現度の向上 / 画像解析の開始が中心で、前年のような大きなインパクトは少なく、動画の生成領域についても生成精度 / 生成できる尺 / コストバランスから利用は限定的となりました。UIの生成領域では、課題解決の証明と定性的なクオリティの定義に対し、安定的なアウトプットを出す労力の高さから、現段階ではアイデア出し等の部分的な活用となっています。
ではAI活用が進まなかったのか?というと、
結論、約半年(春から夏)で、AIの利用時間が約2倍になりました。

前年の調査時点でLLMの生成領域の自然言語理解と推論能力の精度が大きく向上することが予想できていました。そこで、2025年期初にデザイン組織各所からテーマ別にリードデザイナーを招集している組織連携 / 教育推進 / AI推進の3つの横断枠組みを通し、AIの利活用のスピードを止めないために、デザイン組織全体の指針を一本化し明確にしました。

その2025年度のテーマが『「商材・事業・市場」の理解をAIで強化し、中期洞察をインハウスデザイナーならではの視点で行う。』です。
3. デザインと事業の接続点をAIと見出す
2025年度のテーマ『「商材・事業・市場」の理解をAIで強化し、中期洞察をインハウスデザイナーならではの視点で行う。』ですが、単年で身につくものではないと考えています。
この能力が身につくまでに複数年かかるうえ、AGIが一般普及した際には業務上必須になると考えるからこそ、今から着手すべきテーマと判断しました。

まず、注目したのはNotebookLM等のLLM系モデル搭載のソリューションの、取り扱える情報形態が多様になったことでした。「商材・事業・市場」の理解の上で重要な情報源である事業戦略や状況を示すデータと非常に相性が良いです。
年間約40組織を支援しているデザインセンターのデザイン部にて、モデルケース作りをはじめました。組織特性として、DMM全体を跨ぐ共通機能から新規プロダクトのデザインまでを担っており、UX / UI / ブランディング等の広範なプロダクトデザインの一連の業務を行っています。そのため、事業関係者との連携も多く、事業計画や状況等の情報提供が豊富という背景があります。

それらの情報を「事業戦略の収集と再確認 > デザインニーズの把握 > 有効なデザインアプローチの分析 > 中期を見据えた提案&実践」と、齊藤がこれまでマネージャー陣を育成したアプローチをフォーマットにし、メンバー層へ展開しています。
このチャレンジを本格化させ、まだ約半年ですがメンバーからの発言や、個々の業務での提案内容に変化が見られはじめました。特徴としては情報の精査にAIを利用するプロセスを組み込んだことでメンバー自ら仮説構築できる範囲が拡張した点にあります。
特に優良な事例に関しては、これまでと同様に横断枠組みにてナレッジを横展開しつつ社内での浸透を進めています。

参考:取り組み詳細の記事
4. さらなるデザイン組織全体の定着へ
今年度から、デザイン職種も含め等級(グレード)の基準が全社的に刷新されました。その特徴として際立っているのは特にシニア層においてマネジメント層とスペシャリスト層に専門性の分解が行われたこと、そして責任を担う期間が中長期と広がっていくことがあらためて明示された点です。
等級制度改定前から示していたデザイナーの人材戦略とも多くの考え方が合致しており、デザイナーが表現の専門性を求められると共に、中長期に継続可能な価値発揮を我々自らが設計し牽引することの必要性にあらためて向き合う良いきっかけとなりました。
これまでもデザイナー職向けに模範となる行動例を齊藤が作り、評価ロジックと組み合わせ提供してきましたが、これを機に評価ロジックへAI活用を具体的に追記しました。
社における模範的な行動のエッセンスを詰め込んだ評価ロジックに対し、より直接的にデザイナーが参考にできるAI活用のアプローチを紐付けることで、より多く深く、時代の変化と対応に、向き合ってもらえる機会を増やしていくことが狙いです。
AI活用が進んでいるチームでは、評価ロジックと自チームや部署に関する情報をNotebookLMに学習させて目標 / 自己評価 / キャリアの一次相談として壁打ち的な利用を実践してくれているメンバーもいます。このように専門マネジメントの人材数や時間の限界がメンバー個々のインサイトの枷にならないよう、教育や評価側面でもAI導入を進めていきたいと考えています。
さいごに
この記事を書きはじめた11月中旬頃から、生成AIによる画像描画 / 画面構成 / 日本語の取り扱いを中心に、技術的なブレイクスルーが見られました。2026年以降は販促物のAI生成時のクオリティコントロールがテーマとなると考えており、数年後に技術革新が販促物デザインを中心とした制作現場のプロセス刷新のきっかけになったと、振り返る日が来ると思います。
これまでも日本のデザイン業界、特にインハウスでは作ることだけでなく、そのアウトプットが「ビジネス課題の解決になるのか?」という問いへの説明責任能力の需要が急増してきました。
AGIの進化が、デザイン制作フローやソリューションのあり方にパラダイムシフトを起こした後には、説明責任能力こそデザイナーが必要とされる価値の根源になると考えます。しかし、その能力獲得にはデザイナー自身がビジネスの中心へどれだけ接続点を作れる環境があるかが重要と考えています。
60以上の事業を展開しているDMMは、一つの企業体で様々なビジネスにデザインの力を接続できる日本でも稀有な環境であり、各チームのリードデザイナーを起点に繋がり共にアクションし成長する土壌があります。
ぜひ、DMMデザイナー求人一覧から各求人へご応募いただけますと幸いです。