Pagoda デモサイトのリニューアルと今後の情報管理システムの展望

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はじめに

IT インフラ本部の大山裕泰です。

2024年9月、我々は SSoT を実現する情報管理システム Pagoda のデモサイトを公開 しました。
その後、何人かのユーザに直接見て触ってもらい、そこで得られたフィードバックから、多くのユーザが抱える情報管理に関わる課題が SSoT によって解決できることと同時に、その実現がとても困難であることも理解しました。

それを踏まえたうえで、ユーザの SSoT の実現障壁を下げるため、Pagoda について若干の軌道修正(ピボット)を図り Pagoda デモサイトをリニューアル しました。

リニューアルした Pagoda のデモサイト (以下「デモサイト」) では、以下のようにデータセンタのアセット管理(DCAM)や IP アドレス管理(IPAM)といった NOC 運用に関わるうえで必要な機能を追加しました。

また、Google スプレッドシートからの情報同期(取得)を機械的に行うことができます。

ここでは、昨年9月にリリースしてからここまでに至る経過と、AI と絡めた今後の展望についてまとめます。

デモサイトを公開してからの学び

1人企業や個人事業主でない、ある程度組織化(経営者・組織監督者・従業員といった縦の構造化と、営業・開発・総務などといった横の構造化)された会社では、「情報管理」はコミュニケーションと同様に必要不可欠な要素であり、それはシステムによって管理されます。
またそれは、事業の成長と共に必然的に複雑化していくといった事を、以前の投稿 で述べました。

そして、2024年9月にデモサイトをリリースした後、何人かのユーザに直接 Pagoda について見ていただき、そこから得られたフィードバックなどから、我々は以下のユーザ心理の予測を立てました。

「ユーザはシステムの多重化、情報の分散化による業務コスト増(作業ロス)の苦痛を感じているが、かといって既存のシステムの変更はしたくない」

組織(人)とシステムは車輪の両輪の関係です。一方が止まってしまうと、もう片方が動いていたとしても、全体として前に進めなくなってしまいます。

みなさんの会社の基幹システムや、情報管理システム、またはチャットやメールといったコミュニケーションシステムが停止してしまった場合を想像してみてください。おそらく、そういった状況ではほぼ仕事にならないのではないかと思います。

このように、業務とシステムは不可分であり、かつ密接に関連しているため、容易に代替できるものではなく、仮に代替したとしても、一時的に組織全体の動きを緩めて(あるいは止めて)しまう可能性があるため、多くの人は既存システムの変更には慎重になるのだと考えます。

Pagoda の路線変更

こうした学びを踏まえ Pagoda は「あらゆる情報システムと連携し、すべての情報を一元的に管理できるシステム」を目指します。

以下は、一般的な組織における情報管理の対象を簡略化し、類型化したものです。

これを、全てのニーズに対応できる1つのシステムに置き換え、これを永続的に使い続けることは難しいと予測できます。

仮にある時点において、その組織が扱う情報を特定の1つのシステムで管理できていたとしても、顧客により良いサービスを提供したり、新たなニーズに応えるサービスを提供したりとビジネス(業務)は複雑化し、それに応じてシステムも複雑化します。
あるシステムだけでは対応できない場合、別のシステムを導入するでしょうし、別の組織との合併といった外的要因によって、システムが増えていくケースも考えられます。

こうした状況で、既存システムの統廃合による SSoT を実現するのは現実的とは思えません。

そこで Pagoda では、多様なシステムと連携することで SSoT を実現し、組織の能力の向上を図ります。

デモサイトリニューアル

リニューアルしたデモサイトでは、多彩な情報を管理するシステムとの連携の一環として、Google スプレッドシートとの情報連携の機能 をサポートしました。

これにより、以下のようにスプレッドシートのデータを Pagoda に取り込みつつ、Pagoda 内で他の情報との関連付けを自動で行うことができるようになります。

すでに、スプレッドシートが日々の運用によって更新された場合にも、同期 API の実行により自動で Pagoda 側に反映されるため、定期的にこれを行うことで、常にスプレッドシートの最新情報を自動で取得できます。

取得したスプレッドシートの情報は、それぞれ Pagoda のアイテムとして保管されるので、複数のスプレッドシートの運用において鬼門となっていた「他の情報と関連づけて管理する」といったことが容易にできるようになります。

これにより、既存の情報管理に関する運用はそのままで、情報の集約管理(SSoT)が行えるようになります。

さらにリニューアルしたデモサイトでは、我々 DMM インフラ部が業務で利用する DCAM や IPAM といった運用のために開発された機能も使えるようにしました。

こうした機能や Pagoda について興味を持っていただけましたら、是非 Pagoda のデモサイト を試してみてください。

今後の展望

ここまで情報管理システムに関する課題と、これを解決する術についての考察と取り組みについて縷々述べてきましたが、究極的な目的は「業務を効率化する」ことであり、その方法は「人間がシステムを操作する」ことが前提でした。

しかし AI ソリューションの目まぐるしい発展と一般化により、もはやその前提が成り立たないのではないかと予測されます。つまり、従来の「人間がシステムから情報を取得し、別のシステムに対して操作をする」という方法から、①「人間が AI から情報を取得する」状態を経て、②「AI がシステムを操作する」未来が予測されます。

①の状態は、すでに Google などの検索エンジンを通じて必要な情報を直接人が探すのではなく、AI が情報を取得・精査し、人は対話型 AI の UI を通じてそれらの結果を取得している実情から、もうすでに現実となっています。
また②の状態も、エージェント型 AI や Devin などの完全自律型 AI が一般(Commodity)化しているため、②の状態ももはや「未来」とは言えないかもしれません。

そうした場合、従来システムの前提が崩れるため、情報管理も全く新しい方法が求められるようになるかもしれません。
実際に AIアノテーションや MCP といった、システムと AI が効率的に対話できる技術がすでに実用化していますので、人と AI それぞれが使いやすい情報管理システムを今後も模索していきます(乞うご期待)。